読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

divergent's blog

ブログは報道機関ではなく、一般人の意見です。鵜呑みにはしないでください。Twitter→@convi193

スポンサーリンク


シスジェンダーヘテロ男性がトランスジェンダーについて勘違いしていたことまとめ

時事問題-LGBT 時事問題

全ては、ヒューマンライツウォッチの日本の学校におけるLGBTの取り扱いに関する報告書から始まった*1。その報告書を読んだ筆者は、衝撃を受けた。トランスジェンダーの子どもは、多目的トイレの使用を望んでいるとばかり思っていたからだ。報告書には、別室対応や特別対応を基本とする文部科学省の指針がトランスジェンダーの子どもの想いと乖離していたり*2、子どもが使うトイレの種類によって差別を受けたり、本人の意思に反して体の性のトイレを使うことを強制されたりする現状が示されている。このトピックについて調べ始めた矢先に、ノースカロライナ州のトイレ法問題にぶち当たり、数日間、そのトピックが頭から離れなかった。その中で、数々の新しい、意外な情報を手に入れた。そこで、シスジェンダー*3ヘテロセクシュアル*4の男性がトランスジェンダーについて勘違いしていたことをまとめた。各項目のタイトルは勘違いを排した結果、筆者が知った情報だ。筆者がしていた勘違いの内容ではないので、誤解のないよう注意願いたい。

 

トランスジェンダー性同一性障害をおしゃれに言い換えた言葉ではない

トランスジェンダーは、自分の性別について不安を持っている人のことである。性同一性障害は、医療において、そのような人達に下される診断名である。そもそも、性同一性障害は病気ではない*5。医者としては体面上、健康な人に薬を渡したり、治療をしたりすることはできない。そのため、性同一性障害という診断を下すのだ。現在、トランスジェンダーは精神病の一覧からなくされようとしている*6

時々、同性愛者を精神疾患だと差別的に扱う人がいるが、実は、同性愛もすでに精神病ではない*7。同性が好きなことが精神疾患だと差別されるのと同様に、心の性と体の性が一致しないことも精神疾患だと差別されることがある。そうした人々を滑稽に扱い、差別意識を植え付けるメディアも問題だ。そうした番組は、トランスジェンダーの不安を増大させ、社会から切り離してしまっている。逆に、いじめや差別を避けるため、教師や上司が積極的に多目的トイレや別室の更衣室の利用を勧めたり、強制したりするのは問題がある。それは、本人のアイデンティティに対する考えを一切汲み取っていないからだ。もちろん、別室を用意してもらった方がいいという人もいる。だが、彼らにとって必要なのは、その性として認め、受け入れてもらうこと(心の性が認めてもらえないという不安を減らすこと)なのだ。

 

シャーロットの条例によってトランスジェンダーの人が新たに異性のトイレに入ってくるわけではない

これを知ったときに筆者は仰天したのだが、トランスジェンダーの人はすでに心の性のトイレを利用しているらしい。心の性のトイレを利用する彼ら・彼女らは気づかれない程度に男性・女性に適合した外見であり、これまでシスジェンダー(性別について不安がない人)に害を与えてこなかった。日本の場合、女子トイレへの侵入容疑は管理者の意思に依存するため、トランスジェンダーであることをわかってもらえれば、問題なかったのだ。逆に、明らかに理解してもらえない外見の人は、トラブルを避けるために自主的に多目的トイレを使っている。

 

ノースカロライナ州シャーロット市の条例では、トランスジェンダーへの差別を防止するため、トランスジェンダーが心の性のトイレを使うことを積極的に許可した。だが、今回、ノースカロライナ州(など)で制定されようとしているのは、そうした選択の自由を奪う法律であり、トランスジェンダーの人の不安を増大させるものだ。それどころか、すでに心の性に体を適合させた人*8が公共のトイレを利用できなくなる可能性すらある。ノースカロライナ州の場合、法案の内容は、女性が性暴力などの被害を受けるのを防ぐため、トランスジェンダーに出生証明書の性別のトイレを使うよう強制するというものである。たしかに、ホルモン剤治療を受けていない体が男性の人が女性に暴力を振るう可能性は否定できない。それどころか、シスジェンダーの男性がトランスジェンダーの女性と偽って女子トイレに侵入する可能性もある。だが、そんな事例はない*9。それを言うならばむしろ、体が女性のトランスジェンダー男性を女子トイレに入れる方が危険だ。ホルモン剤治療を受けた、体が女性のヘテロセクシャル(女性を恋愛対象とする)の場合、性的衝動が強まっており、女性に乱暴する可能性があると言える(もちろん、そんな事例はない)。一般に、女性同士の性的暴行は強姦になりえないため、トランスジェンダーの男性が女子トイレに入る方が問題になる。性別によって分けられた施設における性犯罪を厳罰化した方がまだ効果的だと筆者は感じる。

 

ホルモン剤治療をすれば、後戻りはできない

引き返せないポイントは性別適合手術だと思っていたが、実際には、ホルモン剤投与の時点で引き返せなくなる。ホルモン剤投与には不可逆な部分が多い*10。特にMtFの場合、たとえ治療を中止しても、長期間ホルモン剤を使っていれば、永久に不妊になってしまう。それに、発達した胸は元には戻らない。FtMの場合、低くなった声は元には戻らず、生えやすくなった体毛は無くならない。ホルモン剤治療を始める時点で、その人の肉体は不可逆的に変わってしまうのだ。途中でやはり私は男なんじゃないか、俺は本当は女なんじゃないかと思っても、遅いのだ。

 

それよりも深刻なことは、ホルモン剤が医師の処方なしに手に入ってしまう事実だ。ホルモン剤はある意味、インフルエンザ治療薬のタミフルよりも強力であり、個人で判断して使うのは危険だ。他の医薬品同様、服用してはいけない人もいるし、副作用もある。もちろん、トランスジェンダーが非常にデリケートな秘密であることはわかる。だが、天から授かった尊い命や大切な体を「無駄」にしてよいのだろうか?

 

ホルモン剤治療では骨格は変わらない(男性らしい骨格、女性らしい骨格は得られない)

ホルモン剤は、骨格までは変えてくれない。FtM(女性から男性)であれば、「ちょっと丸っこい男性」として生きることができるが、MtF(男性から女性)は骨格が変わらないので男性らしさが露骨に残る。男性キャラクターが女性化する漫画やアニメのように、身長は低くならない。逆に、FtMも身長は伸びない。ホルモン剤が変えてくれないものは他にもあり、男性の低い声は高くならないし、胸もBカップ以上には成長しない。逆に、女性の胸は、乳腺は脂肪ではないため、小さくなっても平らにはならない。ただし、二次性徴抑制ホルモンというものも存在し、すでに進行している第二次性徴を抑えることもできる*11

 

性別適合手術は性転換手術ではない

性別適合手術は性の機能をすべて作るものではない。もちろん、性別適合手術で性器を形成することができても、性機能を作ることができないのは知られている。だが、性別適合手術の医学的目的が、ジェンダーアイデンティティに関する不安を和らげることであること*12はあまり知られていない。ホルモン剤治療も同様であり、不安な気持ちを取り除くために、体を心の性に近い形に変えるのだ*13。決して、心の性の体を完璧に作るものではない。

 

ここで、生まれつき手の指が1本ない人のことを考えてみよう。その人は手の指が1本ないことを不安に思っていて、周りの視線も気になっている。実際に、手の指がないことでその人をからかったり、いじめたりする人もいる。病院で不安な気持ちを抑える薬をもらったが、不安の原因は無くならない。そこで、指のエピテーゼ(肉体の一部の形や材質を再現したもの)を作ってもらうことにする。これにより、いじめやいやな視線はなくなり、不安な気持ちは少し和らぐ。しかし、その手の指が他の人と同じように動くわけではないため、不安は払拭できないかもしれない。現在の技術では、動く指を作ることはできないため、万事休す、である。

 

このように、医療技術の都合上、模造品を使って心の不安を和らげるのには限界がある。つまり、性別適合手術に満足できなかった場合、(MtFには豊胸手術があるが、)模造品を与える方式ではそれ以上先に進むことができないのだ*14。完全に心の性を再現できない以上、心の性に変身するという目的を持って性別適合手術を受けることは、本人を絶望へと導く可能性がある。

 

すべての人が性別適合手術を望むわけではない

すべてのトランスジェンダー性別適合手術を望むわけではない。性別適合手術がその人にとっての最終的な安心とは限らないからだ。性に対する不安は人それぞれであり、体が違うことに強く不安を感じる人もいれば、社会的に認められないことに不安も感じる人もいる。もちろん、社会的に認めてもらうために体を心の性に近づけるということもできる。体がその性別に近づけば、その性別だと認めてもらえる度合いが高いなる。それに、日本の場合、戸籍の性別を変更するには、性別適合手術が必要条件だ*15。だが、ホルモン剤治療の時点で周囲に心の性を認めてもらえたなら、それ以上進む必要はない。それに加え、前述の通り、性別適合手術をしても、性機能を得ることはできない。それどころか、本来の性器を失うわけであり、自力で性ホルモンを生み出せなくなる。大きなリスクがある性別適合手術を避けるという選択は賢明だ。ただし、心の性において明確に社会的な地位を得る(=戸籍を変える)には性別適合手術を受ける必要があり、制度的に問題があることは否定できない。

 

おそらく、私がしていたであろう勘違いはまだ書ききれていない。今後もこの問題を追っていきたいとは思うが、さすがにブログのトピックが侵食されすぎているので、一旦のけじめとしてこの記事を書いた。

*1:「出る杭は打たれる」 | Human Rights Watch

*2:性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け):文部科学省

リンク先に置かれているPDFファイルの4ページ目に性同一性障害の子どもに対する対応の参考例が載っているが、多目的トイレが一般的な基準となっていることがわかる。ただし、この文書自体は「きめ細やかな対応」を求めるものだということに注意願いたい。

*3:自分の性別について悩みを抱えていない。

*4:自分と違う性別の人を恋愛対象とする。俗称でノンケと言われることもある。

*5:2.性同一性障害は病気なのですか? | ふらっと 人権情報ネットワーク

*6:Denmark will no longer treat ‘transgenderism’ as a mental illness · PinkNews

*7:同性愛者は病気なのではないですか? | EMA日本

*8:つまり、ホルモン剤治療などで、すでに心の性とほぼ同じ体を手に入れた人

*9:単に女装をした男性が女子トイレに侵入するケースはいくらでもある。

*10:Feminizing Hormones - Transgender Health Information Program

Masculinizing Hormones - Transgender Health Information Program

ソースは英語だが、表にしてくれているのでわかりやすい。辞書アプリなどを使いながら読んでいただきたい。

*11:二次性徴抑制ホルモン(18歳未満) | GID性同一性障害 | 自由が丘MCクリニック

*12:Gender-Affirming Surgeries - Transgender Health Information Program

*13:Hormones - Transgender Health Information Program

*14:もちろん、たとえ性転換者の生殖が技術的に可能になっても、倫理的に問題になる可能性が高い。

*15:裁判所|性別の取扱いの変更

スポンサーリンク