読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

divergent's blog

ブログは報道機関ではなく、一般人の意見です。鵜呑みにはしないでください。Twitter→@convi193

スポンサーリンク


ヤクルト訴訟からみる 性同一性障害・トランスジェンダーの人への適切な待遇って?

人は愚かにも自分と違う存在を差別してしまう

ヤクルト訴訟のニュースがひと段落したところで、問題を見つめ直したいと思います。この記事はヤクルト訴訟のニュースを受けて(怒りを含む)思った事やこうしたらよいのではないかという提案やお願いを詰め込んだ記事になります。筆者は当事者でも真っ当なアライ(理解者、賛同者)でもないので、100%参考になさらずに、ご自分で調べるなどしてください。


性同一性障害

「生物学的な性別と自分認識している性に違和感を感じる障害」のことです*1。英語に直すと、Gender Identity Disorderであり、同一性はアイデンティティのことであるとわかります。性同一性障害は医学用語であり、この状態を名乗るには、医師の診断が必要です。治療法は、心を矯正して肉体の性に合わせること(途上国で問題になっています)ではなく、ホルモン剤性別適合手術(SRS)によって肉体を性自認(後述)に近づけることです。その中でも、性別を超えた人はトランスセクシャルと言います。

トランスジェンダー

トランスジェンダー性同一性障害をおしゃれに言い換えた言葉ではありません。診断されていない人、高額な医療費や高いリスク、あるいは、健康状態や信条によって治療が受けられない人を含め、広く肉体と異なる性のアイデンティティを持つ人を指します。性的好奇心や趣味のために異性装をする人はこの中に含まれません。対義語はシスジェンダー(肉体の性と性自認が一致しており、違和感を感じない人。)です。

 

性自認(ジェンダージェンダーアイデンティティ)

自分の性別をどう認識しているかのことです。

 

性的指向(セクシャリティ、セクシャル・オリエンテーション)

自分が誰を性的に愛するかのことです。これが性自認と同じ性であれば同性愛者、異なる性であれば異性愛者、両方であれば両性愛者、どちらでもなければ無性愛者と分類されますが、トランスジェンダーであることと性的指向は連動する要素ではないので注意が必要です。(自分の肉体と異なり、自分の性自認と同じ性の人を愛する同性愛者のトランスジェンダーもいます。)また、性的にどのような物事が好きかという性的嗜好性的指向とは全く異なります。ゲイやレズビアンバイセクシャルの方は決して変態ではありません。

 

『知らないと恥ずかしいジェンダー入門』という本に、ジェンダーに関する問題が大体網羅されています。この本には、生物学的性の成り立ちやジェンダー論の歴史についても言及されているので、一読される価値はあると思います。

 

 

性同一性障害(トランスジェンダー)の女性(男性)

肉体が男性(女性)で、性自認が女性(男性)の人は女性(男性)と呼びます。一般的な呼称には、戸籍の性別は関係ありません。ただし、戸籍を含む法的な性別は扱いが異なります。日本の法律では、戸籍の性別を変えるのに、以下の条件が必要になります。

 

第三条  家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一  二十歳以上であること。
二  現に婚姻をしていないこと。
三  現に未成年の子がいないこと。
四  生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五  その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
2  前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO111.html

日本の場合、同性婚が違法であり、また、伝統的な家庭制度が保護されてきたこともあり、第二項、第三項のような条件が付いてしまいます。逆に、行政に関わる処理以外では、性別に関わる規制はほとんどないので、トランスジェンダーも柔軟に扱えるはずです。

 

プライバシーの保護

これより下は、性同一性障害トランスジェンダーの方に対する待遇・対処に関するお話です。いずれも筆者の願望が入り混じっているので、必ずしも正確とは言えません。

 

性別移行済みの社員(学生等)が入社(入学)してくる場合

その人が性同一性障害トランスジェンダーであること、あるいは、男性または女性として扱われてきた過去などは性的なプライバシーに当たるので、重要な秘密です*2。採用においても、本人が申告してこない限り、性同一性障害トランスジェンダーについて尋ねてはいけません。これは残念ながら、日本では法的な義務ではありません。しかし、厚生労働省による公正な採用基準には反するとしている自治体もあります*3。グローバルに展開する企業や大企業は当然コンプライアンス遵守の責任がありますから、差別は許されません。

 

ところで、「私は男性でも女性でもない」というXジェンダーの存在をご存知でしょうか?Xジェンダーの方は、男性か女性かを選択させるwebフォームに対して、非常に困っているようです。もし、webフォームでの応募を受け付けている場合は、性別の欄を廃止していただくか、「その他」の項目を追加し、あるいは自由記述にしていただけるとよろしいかと思います。


すでに所属する社員(学生等)が性別移行する場合

その人の性に関するプライバシーは守られますが、その人が性同一性障害トランスジェンダーであることを他の社員に告げないと混乱を招きます*4。全員が顔見知りの小さな職場であれば、口頭報告でも良いようですが、人数が多すぎる職場だと、今回のケースのようになってしまうので、メールによる通知が適切のようです。報告は事後よりも事前に、「◯月◯日から男性・女性として勤務すること」をはっきりと示すのが良さそうです*5。性別移行する社員や学生がいる場合、明らかに関係ない部署(本人と関わりのない部署)やキャンパスの人には伝える必要がないかと思います。確かなことは、好奇心や「知るべきだ」「知っておいたほうがよい」という義務感は本人のプライバシーよりも優先順位が低いということです*6。あなたの性器の形や大きさは知りたいという人がいるかもしれませんが、明らかに必要のない情報です。それは、トランスジェンダーの人にとっても同じです。

 

ステルスや埋没と呼ばれる人々は、移行期に合わせて職場を転々としているようで、職場職場で性的なあり方を変える人もいます。もし仮に本人が異動を求めている場合は、プライバシーをできるだけ隠した状態で異動させるようお願いします。


性同一性障害トランスジェンダーへの理解の推進

そうした社員や学生を受け入れる前に、他の社員や教員などに理解を求める必要があります。理解をしていないと、今回のように、リードした(性同一性障害であることを見抜いた)同僚が本人に「あなた性同一性障害ですよね?」と心ない言葉をかけてしまうこともあるでしょう。同僚に(たとえそれが正解であっても)「あなた、発達障害ですよね?」と声をかけたら失礼にあたることからも、これがいかに問題発言なのかがわかると思います。

 

トイレ・更衣室

トイレ・更衣室は、基本的に性同一性障害トランスジェンダーの社員の希望通りのものを使わせる必要があります。多目的トイレや特別な更衣室を、本人が希望していないのに押し付けた場合は、排他的なセクシャルハラスメントに当たるのでやめていただくのがよろしいかと思います*7。本人の移行段階(外見が男性的か女性的か)に合わせて本人が決めることであって、「女性社員が嫌がるからトランスジェンダー女性を女子トイレに入れない」などの措置は不当です*8。特に、戸籍を変えた性同一性障害の女性はどう考えても女性であり、確実に拒否できません。どうしてもシスジェンダーの女性に対して配慮が必要だという場合も、更衣室においてトランスジェンダーの人だけを囲いで隔離するということは差別に当たるようなので気をつけて下さい。全員が自由に使える囲いを用意するのは問題ないということです*9

 

「男性」を女子トイレに入れれば(シスジェンダー女性が)性的暴行を受ける恐れがあるという指摘もあります。しかし、それは幻想に過ぎません。1つの要因として、(ホルモン剤治療を受けている人は)ホルモン剤により、男性的な性欲が減退し、不妊になっているということが挙げられます。他にも、性的暴行と性別は関係無いという指摘や、シスジェンダーの人が性的指向と同じ性別のトイレに入ることは許されている*10という反論も考えられます。

 

いずれにせよ、生まれついた性が男性だからといって、レイピスト予備軍とするのは間違いでしょう。もちろん、トランスジェンダーのレイピストを擁護しようとしているわけでは決してありません。女性に性的暴行を加えた社員が解雇されないわけがないと思いますので、シスジェンダートランスジェンダー、男性・女性に関わらず、そういう方は厳正に処分してください。
(診断書がある性同一性障害と違い、トランスジェンダーは言うだけタダですので、トランスジェンダーの身分を悪用して犯罪をする人もいるかもしれません。本当のトランスジェンダーの人はそういった悪人とは区別して考えてください。)

 

逆に、性同一性障害トランスジェンダーの男性社員(男子生徒)が男子トイレを使うことに関しても、同様に、男性から性的暴行を加えられるという危惧がトランスジェンダー男性の上司や先生にあると思います。基本的に、女性の肉体を持つ人は、生殖器を摘出しない限り、妊娠してしまう可能性があります。女性とみなして暴行を加えることも、本人が女性として見られているという明確な証拠になってしまうので、著しい人権侵害になります。ところで、彼らが男子トイレを使う上での大きな問題が2つあります。いつも個室を使う必要があることと、男子トイレにサニタリーボック*11など女性の肉体を持つ人が必要とする設備がないことです。そうした点に関しては、配慮をお願いします。

 

その他の批判・懸念等

性同一性障害はわがままだと思う

わがままではありません。彼らは「男(女)になりたい」のではなくて、「男(女)でありたい」のです。仮に、明らかに男性に見えるシスジェンダーの人に「女でありなさい」と言うならば、その発言者はわがままだと思います。


性同一性障害(トランスジェンダー)の人が希望するトイレを使うことに違法性はないか

トイレや更衣室に関しては、日本の法律では使用する性別を制限していません。管理者の意思に反する場合のみ、(刑法130条により、)建造物侵入罪になります*12。自社所有の物件や学校であれば、逮捕される要件は満たされないはずです。入浴施設になれば各自治体に条例があって、また異なると思いますが、温泉旅館などで福利厚生として自社の入浴施設を社員が使えるなどでない限り、関係ないでしょう。


トランスジェンダーと性的好奇心や趣味を目的とした異性装との区別はつくのか

基本的に、本人を信じるしかありません。注意していただきたいのは、本人の性的興奮などの生理現象で区別することはできない*13ということです。一方で、本人がトイレや更衣室で明確な性的行動(自慰行為や公然わいせつなど)を始めた場合は、前項で挙げた建造物侵入罪が適用されるはずです。

 


この記事はあくまでヤクルト訴訟に対して感じた感情を文字に変換したものです。でも、筆者でさえその感情が正しいかわかりません。正直なところ、自分の周りにステルスの人がいるかなんて、誰にもわからないと思います。常に周りにいる人がトランスジェンダーひいてはセクシャル・マイノリティである可能性を考えて生活していくことが大切なのではないでしょうか?

*1:トランスジェンダーってどんな人たち?基本的な意味から特徴、取り巻く問題など様々な形のアイデンティティのあり方を徹底解説!|welq [ウェルク]

*2:イギリスでは、こうした過去の情報は保護すべき情報として法律で定められています。

The workplace and gender reassignment - Publications - GOV.UK

p.21

*3:http://www.pref.osaka.lg.jp/rosei/koseisaiyo/400-ihanjirei.html 少なくとも大阪府性同一性障害者の差別は公正な採用基準に反すると言っているので、在阪の企業の方はご注意願います。

*4:The workplace and gender reassignment - Publications - GOV.UK, p.23. 以下、日本にも通用すると思う部分について引用・要約します。

*5:The workplace and gender reassignment - Publications - GOV.UK, p.52に英語の見本あり。日本の書き方に置き換えれば流用できると思います。こうした報告は営業秘密とは異なりますが、同様に軽々しく口にしたり、関係のない方へ口外したりすることのないようにしてください。口外(アウティング)は名誉毀損になる可能性があります。

*6:The workplace and gender reassignment - Publications - GOV.UK, p.27.

*7:多目的トイレや特別な更衣室は本人の移行段階によっては本人が求めてくるかもしれませんが、本人に強制してよいものではありません。

*8:例えば、あなたがある日突然、自分のジェンダーと逆の性別の体を手に入れたとして、その体の性別と同じ性別の人の前で恥ずかしがらずに着替えられるでしょうか?昨日まで女子の中で着替えていた人が急に男子の前で着替えさせられるのはとても耐えられないと思います。

*9:The Transgender Witch Hunt in Bathrooms and Locker Rooms

*10:男性を性的対象とするゲイのシスジェンダー男性は、男子トイレや男子更衣室の使用を許されています。女性も同様です。女性を襲うのは肉体的に男性の人とは限らず、肉体で一元的に、単純に処理できる問題ではありません。In the battle over bathroom privacy, transgender people’s needs matter more.

*11:ホルモンを服用していない人は自分の意思で生理を拒否できない。

*12:刑法

*13:ホルモンバランスの調整のため、本人の意思とは無関係に性的な機能が働く場合もあるそうです。

スポンサーリンク