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divergent's blog

ブログは報道機関ではなく、一般人の意見です。鵜呑みにはしないでください。Twitter→@convi193

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トランスジェンダーのためにトイレは全個室化されるのか?〜トイレ改革案の検証〜

時事問題 時事問題-LGBT

安心してトイレを使うためにすべきこと

毎度厚かましくて申し訳ないが、今回もトランスジェンダーの件について検討したい。議論の流れを円滑化するために再登場する概念・記述等もあるが、そこは目を瞑っていただけるとありがたい。

 

 


今回考えていきたいのは、トランスジェンダーのためにトイレを変えていくとしたらどうすればいいのかについてだ。TL上で挙がっている案やそれに関連して自分で考えた案を自分なりに検討してみたが、今回挙げたものに完璧な案は、残念ながらなかった。


トランスジェンダーに対する世間の理解が進んでいない現状から考えても、法案を作って即成立ということになるとは考えづらい。トランスジェンダーを守るにしろ、排除するにしろ、誰がトランスジェンダーかわからないのであれば、意味がない。多目的トイレやトランスジェンダー専用トイレを作って「逃げ道」を確保しても、「逃げた」こと自体が迫害の対象になってしまっては、本末転倒だ。


それから、トイレから男女の括りをなくして全個室化することに関しては、トランスジェンダーに対して一定の恩恵があるものの、様々な問題があり、残念ながら実現が難しそうである。これらの問題を解決するには、財政的な懸念だけでなく、性的な懸念も払拭する必要がある。確実に言えることは、自分と違う人に対する偏見の目がある限り、異なるジェンダーの人が分かり合える日はこない。そして、性犯罪がなくならない限り、性別の壁をなくすことはできないということだ。

 

 

現状(維持)

違法ではない

トランスジェンダーの存在が知れ渡った以上、シスジェンダー*1トランスジェンダーに対する不安が拭えない。だが、どちらの性のトイレを使用するかに関する法律がない現状、トランスジェンダーによる性自認のトイレの利用は違法ではない*2。つまり、トランスジェンダーの人が自分の望むトイレを使うことは可能だ。

 

進まない理解

しかし、世間のトランスジェンダーに対する理解が進んでいないのが現状で、「心は女」と言えば男性は誰でも女子トイレに入れるというある種の誤解があったり、女装家とトランスジェンダー女性とゲイ(あるいはそれらを冷笑的に描いた作品)が混ぜこぜになったりしているようだ。(「私のTLではトランスジェンダーに理解があるよ!」という人も、エゴサしたり、身の回りの人に聞いてみたりしよう! もっといろんな誤解や偏見があるはずだ!)


それから、トランスジェンダーがトイレで困っているということも、なかなか伝わらないものと思われる。「我慢して生まれつきの性のトイレを使えばいいじゃない」とマリー・アントワネットのようなことを言う人も多いと思うが、その人の見た目によっては、男子トイレ・女子トイレともに追い出されてしまって、多目的トイレもないというような絶望的な状況になることもあるようだ。つまり、本人の気持ちの問題というよりも、周りの理解の問題なのである。

 

逃げ道としての多目的トイレ

トランスジェンダー側の問題としては、上記のように、生まれつきの性を見抜かれた場合にトイレが使用できなくなることと、その場合、性自認の格好のまま、生まれつきの性のトイレに入ることができないことが挙げられる。このときの逃げ道が多目的トイレになるわけだが、多目的トイレがトランスジェンダーの誰もが望むトイレというわけではない。多目的トイレを望むのは主に、性自認が男性でも女性ではないXジェンダーである。(もちろん、トランスジェンダーの男性・女性の中にも多目的トイレが丁度いいという人はいる。)

 

トランスジェンダー男性特有の問題

前回の記事がトランスジェンダー女性(MtFと呼ばれる)を前提にしていたので、こちらに書いておくべきことを書く。トランスジェンダー男性(FtMと呼ばれる)の場合は、基本的に、シスジェンダー男性が大きい方でしか使わない個室に入ることになる。また、男子トイレにはサニタリーボックスはない*3。そして、肉体は女性なので、それこそ、シスジェンダー男性から守るための施策が必要になっていくだろう。

 

トランスジェンダー性自認に基づくトイレ利用の合法化

トランスジェンダー性自認に基づいてトイレを利用することを合法化しよう。こうすれば、トランスジェンダー女性が女子トイレに入っただけで逮捕されるというようなことはなくなる。だが、やはりシスジェンダーの不安が拭えない。そのため、社会のトランスジェンダーに対する理解を広めることは必須である。この案を実行する際、議論の的となるのが、トランスジェンダーであることをどう確認するかだ。

 

トランスジェンダーか確認するには

一定の基準によってその男性に生まれついた人がトランスジェンダーかどうかを確認することは難しい。なぜなら、トランスジェンダーの構成要件が性自認という極めて抽象的な概念だからだ。その人の女性らしさを審査する中立的な存在は現時点では存在しえない。そのため、生まれつきの性が男性である人によるトイレの利用は良心に委ねられることになる。

 

異性の公衆トイレの利用の違法化

女性を装った(女装した)シスジェンダー男性の女子トイレの利用を防ぐには、異性のトイレへの立ち入りを禁止するという方法が考えられる。これにより、トランスジェンダーの権利を悪用される可能性は低くなり、シスジェンダートランスジェンダーも安心感が得られるはずだ。だが、この場合、どこまでが異性なのかが問題になる。基準が戸籍やパスポートの性なのか、肉体の性なのか、性自認なのか、「性他認」なのかで状況は変わってくるはずだ。


まず、法的な性別の場合は、性別適合手術を受けて法的手続きを経ないと性別を変えられないトランスジェンダーに圧倒的に不利だ。しかも、本人確認書類の提示はトイレという急を要する施設には不向きである。次に、肉体の性であれば、性別適合手術を受けるだけでよいのだが、依然ハードルは高い。しかも、肉体を見ないとわからないので、セクシャルハラスメントになる。

 

中立的な判別

それから、性自認を中立的に判断する場合は、基準がしっかりしていないと「男性らしくないシスジェンダー男性」や「女性らしくないシスジェンダー女性」がそれぞれのトイレから排除されてしまう。それに、悪意があって完成度の高い女装家が女子トイレに入ってきた場合、女性だとみなされる可能性がある。やはり、中立的な判断は難しいと言わざるを得ないだろう*4。最後に、トイレの利用者の目で審査するとしても、やはり個人のバイアスがかかってしまうため、公平とは言えない。こうした理由から、異性のトイレへの立ち入り禁止は現実的ではないのかもしれない。

 

多目的トイレの増設

トランスジェンダーの受け皿を作るのがこの政策の意図だと思われる。ここで勘違いしてはいけないのは、多くのトランスジェンダーの最終目的は他の人と同じ女性・男性になることだということだ。つまり、多目的トイレは抑圧や迫害から逃れるシェルターを提供しているにすぎず、それを利用することで起こる抑圧・迫害もある。そして、多目的トイレしか使ってはいけないとなれば、それはトランスジェンダーの意思の否定となり、排除となる。詳しくは後述する。


多目的トイレの増設によって最も得をするのは、前述のXジェンダーの人々であろう。トイレという性別の檻から解放される度合いが高まる。もちろん、多目的トイレは「本来」障がい者に向けたものであるが、トランスジェンダー・Xジェンダーも多目的トイレを使ってもよいという認識が広まれば、申し訳なさや肩身の狭さも緩和されるのではないだろうか?

 

トランスジェンダー用トイレの設置

トランスジェンダー≠第三の性

トランスジェンダー用のトイレを設置すべきという意見もある。これによって、シスジェンダーは不安がなくなるが、トランスジェンダーはある種のアパルトヘイトを受けることとなる。つまり、トランスジェンダー専用トイレは「あなた方は我々とは違う」というメッセージに他ならない。トランスジェンダーを第三の性と考える人もいるかもしれないが、トランスジェンダーの人には男性・女性もしくはXという性自認があり、全員が第三の性として扱われたいわけではない。

 

トランスジェンダー≠性別を持たない人

誰がトランスジェンダーとして扱われるかの議論はすでに書いた通りだ。ここで問題にしたいのは、誰がトランスジェンダーかではなく、トランスジェンダーの性別はどれか、である。トランスジェンダー用トイレがどういう形式のものになるかはわからないが、仮に「第三の性」として、男子トイレ・女子トイレと同じような第三の公衆トイレを作るという意味であれば、やめたほうがいい。


それはトランスジェンダーにだけ「男性であっても、女性であっても、同じ公衆トイレを使え」と言っていることになるからだ。シスジェンダー本人は性器の違う人に同じトイレに入ってほしくなくて、トランスジェンダーには「違う性器を持っているけれど、トランスジェンダー同士仲良くやれ」と言っているのであれば、それは差別だ。彼らは性別を放棄しているわけではなくて、性別を主張している。


一方、通常の多目的トイレのように個室のトイレを用意するのであれば、トランスジェンダーオンリーである明確な理由づけが必要となるだろう。それは感情任せではなく、実質性を備えたものでなくてはならない。そうでなければ、「トランスジェンダー優先」の多目的トイレやトランスジェンダーが使えることを明示した多目的トイレのように、トランスジェンダーでも使いやすいという程度のものにとどめるべきだろう。

 

幸せという名のエゴ

トランスジェンダーだけトイレを別にするということは、トランスジェンダーの人はトランスジェンダーの人と一緒にいた方が幸せになれるということだろうか? それは部外者のエゴに過ぎない。身体障害者や要介護者のように、特別なトイレが必要であるという理由はないのだから、隔離に正当性はない。社会から遠ざけていると言われても仕方がないだろう。多様性を受け入れるのではなく、理解できないので隔離するとは感心できない。

 

暴露されるトランスジェンダー

問題はそれだけではない。ただでさえ打ち明けにくいトランスジェンダーという属性が、トランスジェンダー専用トイレを利用することによって暴露されてしまう。トランスジェンダーにこうしたシェルターを作ることで、トイレ内でのいじめは防げるかもしれないが、トイレ外のいじめはむしろ加速するだろう。

 

全部を個室化、性別不問にする

人権問題の解決

トイレにおける性別の壁をなくし、ジェンダーや肉体的な性にかかわらず、トイレを利用できるようにするという案がある。これによって、トランスジェンダーの人権侵害を防ぎつつ、トランスジェンダーがトイレに入ってくることに対する拒否感もなくすことができる。それから、どのような構造をとるかにもよるが、学校のトイレで起こるいじめを防ぎやすくなるはずだ。同性同士のみで行われるコミュニケーションがなくなることにもなるが、メリットと比較考量すれば、問題はないだろう。

 

高まる性犯罪の可能性

しかし、女性に対する性犯罪ということを考えると、この案は有効とはいえない。たしかに男性と女性がどちらも利用できるトイレといえば、家庭のトイレと同じであり、共用にすることは全くもって無理ということはできないだろう。だが、そこに入るのは血縁と信頼で結ばれた家族ではない。何のつながりも持たず、信頼もない他人だ。男女が共同でトイレを使うことは盗撮や性犯罪を容易にし、女性を危険に晒してしまう可能性がある。それから、男性の目に触れられたくない行為も難しくなるかもしれない。

 

効率の低下

それだけではなく、男子トイレの小便器が洋式便器に変わるので、トイレ全体の稼働効率が下がる。イベント会場などでは、これまではそこまでの混雑に巻き込まれなかった男性も混雑に巻き込まれることになり、混雑の影響を受ける人数が増えると考えられる。このような停滞を防ぐには、便器の数をこれまでより増やす必要があるだろう。ところで、話は戻るが、異性の使った便器を使うことに拒否感があるという人も多いと思う。男女共用トイレが実現した場合、少なくとも男性の立小便を禁止することになりそうだ*5。いずれにしても、トイレの平均滞在時間は増えるものと考えられる。

 

作り変える費用

この案における大きな問題のひとつが、他の案と違い、トイレを大きく作り変える必要があることだ。男子トイレを全部個室に作り変え、各トイレから性別を表す掲示を取り払っただけにしたとしても、施設を運営する企業や団体には重い負担になるだろう*6。一方、海外のユニセックスのトイレ(Unisex Bathroom)では家庭や小規模店舗のような個室トイレをいくつも並べる形式のものもあるようだ。日本の既存の建物でここまでやるのは難しいと思う。


以上が私の検討である。上記以外にも課題がどんどん出てくると思うが、難しいからと言って、現状を悪化させるようなことはあってはならないと私は思う。それから、更衣室・シャワールーム・入浴施設となると対応はまた違ってくるので、別の機会に考えたい。

*1:トランスジェンダー以外の総称。性別を移行し終えた人もシスジェンダーに含まれるようだ。

*2:建造物侵入の容疑での摘発も可能ではあるが、違法性は限りなく低いようだ。

性同一性障害者のトイレ使用と住居等侵入罪の関係性について - 弁護士ドットコム

*3:NHKのサイトにこんなページがある。NHKオンライン | 虹色 - LGBT特設サイト | 連載 | 修学旅行リベンジ! | トイレの使い方について

*4:カメラと人工知能を利用した識別方法を考えよう。この方法であれば、人間よりも中立的に判断ができるはずだ。しかし、予算の関係上、そうした設備の実現は難しいだろう。

*5:シス女性の方のために書いておくが、そもそも男子トイレの個室で立小便をする人はあまりいない。

*6:この場合の問題は、仕切りを隔てて異性がいるので恥ずかしいということだろう。こうした廉価版ユニセックストイレは受け入れるのが難しそうだ。それに、トイレは壁の色が男女で違う場合があり、実質的に男女の区分が残ってしまう可能性がある。

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